さらに詳しく東京庵
東京庵は、明治十七年(一八八四年)に愛知県豊橋市の地に創業しました。
創業者の名は、戸倉常五郎。
現在の東京都国分寺市出身で、現在も地名が残る戸倉新田の開拓者一族でした。
常五郎は、妻の出身地である豊橋に移り住み、現在の東京庵につながるうどん・そばを中心とした飲食店を始めました。
愛知県豊橋市で「東京庵」という店名は、常五郎が故郷の東京を想い名付けたものです。
また、当時は江戸から東京へと地名が変わってまだ間もない頃で、前年には鹿鳴館が開館し、文明開化の真っ只中であり、「東京」という名前は新しい時代を象徴するもので新しいスタートをきる常五郎の心中を表したものだったのかもしれません。
その後、三代目である戸倉岩夫は、最良の食材を求めて、地元は勿論、日本全国を巡り、さらにはオーストラリアや中国まで小麦やソバの栽培指導に出かけました。
そして、それまで受け継いできた伝統を基に様々な改良を試み、現在に続く東京庵の土台を築いたのです。
当時としては先進的なそれらの試みは、大変高い評価を獲得し、昭和三十八年(一九六三年)には高松宮妃殿下にご来店いただくという栄誉も賜りました。
昭和五十一年(一九七六年)には、豊川店を開業。
現在でこそ多くの飲食店がこの地に進出していますが、当日は辺り一面が田んぼで近くの三明寺には、湧き水がこんこんとわき出る土地でした。
ここに、当時としては斬新な大型店舗を建設、東京庵のイメージである水車小屋を移築したのです。
その後、新館を増設し、現在に至っています。
また昭和五十五年(一九八〇年)には、本店が新たに四階建てのビルに建て直されてオープン。
リニューアル一周年記念には、四代目の戸倉良三の発案で恵まれない子供たちを招待して食事会を開催しました。このチャリティー行事は途切れることなく平成の世となった現在も続けられ、毎年六月には恒例行事となっています。
明治、大正、昭和、平成、四つの時代を見つめてきた東京庵は、日本の食文化の伝統を守りつつ、新たな挑戦を続けていこうとしています。